児島君のこと(1)

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なおぼんの友人の中学の先生の萌え体験です。
じゃあ、柏原先生、お願いしますっ!

今日も、児島君が来ていない。
もう二週間も無断欠席だ。
あたしが、二年三組の担任を 仰せつかって、こんな生徒は初めてだった。
登校拒否の生徒は、当校でも数人いるのだけれど、あたしが直接関わるのは初めてなのだ。
副担任の澤(さわ)みなと先生 と学年主任の棚橋源造(たなはしげんぞう)先生と相談して、おととい家庭訪問をしたのだけれど。
児島和樹(こじまかずき)君のお父さんは裁判所書記官という堅い仕事で、お母さんは入院中だそうだ。
聞けば、胃癌だそうで、かなりお悪いらしい。
和樹君は一人っ子で、引っ込み思案なおとなしい子だというあたしの印象だった。

「また、訪問します?」
澤先生があたしに聞く。
「そうね、行ってみようか。今日」
「わたし、今日は午後から指導研修があるんで・・・」と副担任。
「そっかぁ。やっぱり一人で行くのはまずいかな」
「児島君なら大丈夫じゃないかなぁ。おとなしいし」

なんで、こんなことを言うかというと、登校拒否の案件において家庭訪問が必須なのだけど、実施するにあたって、必ず二人で訪問するようにと当校の方針があるからだ。
保護者がいなくって、男子生徒本人が一人しか家にいない場合は、特に注意が必要なのだと。
前に、同じような男の子の案件で、女性教員がひとりで訪問して、襲われたことがあったから、こんな規定ができたのだ。
児島君は、一人っ子で、お父さんは仕事でいない。
お母さんも入院中だ。
ずばり、あぶない状況には違いない。
もしなんかあったら、落ち度はあたしに問われるし、副担任にもそれは及ぶ。

あたしは、それでも、深くは考えなかった。
児島君がそんな恐ろしい子にはとうてい思えなかったから。
それに、あの子が襲ってきたとしても、あたし合気道やってるから簡単に撃退できるし。

彼に電話をしてみた。
「もしもし・・・児島君?担任の柏原です」
「・・・先生?」
「そうよ。あなた、何も言わないで休むから、心配してお電話したのよ」
「ごめんなさい。ぼく、なんだか・・・」
とぎれとぎれの発話で、要領を得ないが、非常に思い悩んでいるのはわかる。
「あたし、これからそちらに伺っていいかしら?」
「来るの?先生」
「そうよ。いいかな」
「いい・・けど・・」
「じゃ、一時間ぐらいしたら行くね。お家におってよ」
「うん」
とりあえず、アポは取れた。
棚橋先生には、それでも言っておかなければならない。

「児島が、また休んでるんやて?」
「そうなんです。あたし、午後から行ってこようと思いまして」
「澤先生と一緒にか?」
「いえ、澤さんは研修なんで、あたしだけで」
「あかんよ。男の子のとこに一人で行ったら」
「大丈夫ですよ、児島君なら」
「まあ、ちっさい子やけど、危なないかな。あんたは武道やってるから大丈夫やろうけど、反対に怪我さしたら厄介やで」
「その点はご安心を」
「ほなら、行ってくれるか」
「はい」

土曜日は午後の授業がないので、あたしはケーキを買って児島君のマンションに向かった。
駅からちょっと離れた、田んぼの中にそのマンションは建っていた。

ピンポ~ん
インターフォンの呼び鈴を鳴らす。
しばらくして、元気のない男の子の声が「はい」と答えた。
「柏原です」
チェーンロックが外され、あたしを中に入れてくれた。
「先生、一人?」
「うん」
パンプスを脱いで揃えながら応える。
「澤先生と一緒じゃないとだめなんじゃないの?」
「なんで、そんなこと」
「藤原が曽野先生を襲った話、知らないの?」
「知ってるけど。児島君はそんなことしないでしょ?」
「ぼくだって、わかんないよ」
「生意気言って。はいケーキ。一緒に食べよう」
あたしは、リビングのテーブルにケーキの箱を置いた。
「どうなの?具合は」
「よくない」
部屋はけっこう散らかっていた。
「風邪ひいてるとか?」
「そんなじゃないけど、なんか、学校には行きたくないんだ」
「ま、いいや。食べよう。お湯沸かして紅茶でも入れてくれない?」
「あ、うん。やるよ」
そう言って、彼はキッチンに入っていった。


ティーバッグの紅茶でケーキを二人で食べた。
「お昼は食べたの?」
「うん、ラーメン」
「晩は?」
「コンビニ弁当」
「なんか作りなよ。調理実習もやってんでしょ」
「めんどくさい」
「お父さんは外で食べてくんの?」
「うん」
流しとかは綺麗なままで、ラーメンを作ったであろう、片手鍋だけが洗わずに置かれていた。
「和樹君のお部屋を見せてよ」
「汚いよ」
「片付けてあげようか」
「やだよ」
「じゃ、見るだけ」
彼は、しぶしぶ部屋に案内してくれた。
むっと、湿っぽい匂いがした。
なるほど、かなり散らかっている。
アニメの女の子のポスターが壁にべたべたと貼ってあった。
シングルのベッドが置かれているから、なおさら狭い。
棚の上にはフィギュアって言うのかしら、可愛い女の子が数躰並んでいた。
それとタワー型のパソコンが一台、机の上を占居していた。
ゴン・・・
あたしは足元をよく見ておらず、ゴミ入れを蹴飛ばしてしまった。
ティッシュの塊がどっさり散らばった。
「うあ」
彼が慌てた表情で拾おうとする。
あたしも、
「ご、ごめんなさい」
そう言って拾い集めようとしゃがんだら、あの特有の青臭い匂いが鼻を突いた。
もう、大人なんだ・・・和樹君。

「い、いいよ先生。ぼくがするから・・・」
あたしは、その場を取り繕おうと、立ち上がり、
「可愛いおにんぎょさんね」とフィギュアに話題を持っていこうとした。
「ああ、それいいだろ。ぼくが作ったんだ」
「へぇ。器用なのね、和樹君」

「先生、明日は学校に行くよ」
バツの悪そうな表情で彼が口を開いた。
「そう。待ってるわ。クラスのみんなも心配してるよ」
「そうかな。ぼく一人いなくっても、だれも気づかないんじゃないか」
「そんなことないよ」
そう言って彼の頭を抱いてあげた。
あたしより十センチは背が低い男の子。
「寂しんだよね。和樹君」
彼は、あたしの胸に顔を埋めて、うんと頷いた。まだまだ幼いんだ。
急に、彼はあたしを抱くように手を回してきた。
「和樹君・・・」
「先生」
「な、何を・・・」
「先生、好きだ」
あたしは、タックルされるようにベッドに押し倒された。
曽野先生のことが頭をよぎった。
「だめよ、和樹君」
「いいでしょ。ぼく、先生のことが」
両手を押さえられ、じっとあたしを見つめている。
その目は真剣そのものだった。
彼をねじ伏せるのは訳なかった。でもそれでは和樹君のプライドが傷ついてしまう。
彼はあたしの唇を奪おうと顔を近づける。とっさにあたしは目をつぶった。
柔らかい、震える肉があたしの唇に接する。
そして彼の舌が侵入を企てた。
甘い香りはケーキのものだろう。
くちづけくらいいいじゃないかとあたしは思った。
好きなように彼にさせた。
一瞬、夫の顔が浮かんだが、すぐに消えてしまった。
それほど、和樹君の必死さが伝わって、健気で、可愛かった。

「初めてのキス、どう?」
「先生、ありがとう」
「はい。おしまい」
「先生、セックスしたことあるんでしょ」
「当たり前でしょ。結婚してんだから。女性にそういうことは聞いちゃ失礼だぞ」
「ぼくもしたい・・・」
「気持ちはわかるけど、あたしはできないよ。あたしには旦那さんがいるの」
「そうだよね。キスだって見つかったら大変だもんね」
「わかってんなら、もうやめようね」

素直に和樹君はあたしから離れて、気持ちが収まったようだった。
あたしも、安心した。
「このことは、あたしたちの秘密よ」
「うん、わかってるって」

あたしは着衣を整えて、ベッドを立ち上がった。
「じゃ、あたし帰る。あしたきっと来てよ」
「はい」

その日はそれで終わった。
「危なかったぁ。思春期の男子はスキを見せたらヤバイなぁ」
あたしは駅への道すがら、さっきのことを振り返っていた。

澤先生がその後とんでもないことに巻き込まれることとは知らずに・・・

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